堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 子育てというのは想像して以上に大変で、出産後の一年は壮絶だった。

 中でも大変だったのが、寝不足とホルモンバランスの崩れから自分の情緒が不安定になってしまうこと。

 志門さんが出張でいない日の夜には不安で涙が出たり、かといって彼が家にいるとわけもなくイライラしたり、自分で自分が嫌になった。

 それでも翔音は、私が泣いているそばで「んー、ま」と平和に喃語でおしゃべりしたり、ふとした時にニコッと微笑んでは私を癒してくれ、試行錯誤しながらも、徐々に子育てに慣れていくことができた。

 そして、翔音が一歳を過ぎ、卒乳も完了した頃。

 そろそろ一緒に飛行機に乗れるだろうと、家族三人で、志門さんのお祖父さまとお祖母さまの住むウィーンを訪れることになった。志門さんと出会ったのとちょうど同じ、九月のことだ。

 彼らの住まいは郊外にある大きな一軒家で、お祖父さまがすべて設計したのだそう。見た目は洋風だが、至る所に宮大工であったお祖父さまの技術が光る、特別な家なのだという。

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