堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
出会った夜となにもかも同じ、宮殿の巨大ホール。ドレスアップした大勢の人々の中に、オーケストラの生演奏が響き渡る。
あの時も感じた独特の緊張に包まれるけれど、今日は最初から隣に彼がいてくれるので怖気づくことはない。
舞踏会が始まると、私は志門さんにリードされながら、ぎこちなく踊り始める。
あの頃からまったく上達していないが、志門さんがうまく誘導してくれるので、転びそうになりながらも、なんとかワルツのステップを踏んだ。
前は一曲しか楽しめなかったから、今夜はもっとたくさん踊ってコツを掴めたらいいな――。
私はそんなことを思いながら舞踏会の雰囲気に酔いしれていたが、二曲目を踊り終えた頃、志門さんがどこか上の空で心ここにあらずの様子であることに気づく。
どうしたのかと思っていると、彼はそっと私の耳元に唇を寄せて告げた。
「次の曲が終わったら、抜け出そう。あの夜みたいに」
「えっ?」
ドキッと鼓動が跳ねて、どういう意味かと上目遣いで彼を見つめる。すると、仮面をつけているせいかいつも以上に艶かしい雰囲気の彼が、吐息たっぷりに囁いた。
「記憶を取り戻してからずっと……瑠璃が欲しくてたまらないんだ」
華やかなホールの真ん中で、初めての夜と同じように求愛される。
彼に焦がれていたのは、私も同じ。私はかかとを上げて背伸びをすると、彼の耳元でこっそり「私もです」と答えた。
甘い約束を交わした私たちは、はやる気持ちを抑えて最後の一曲をゆったりと踊りだす。
私に初恋を教えてくれたウィーンの街は、今夜もとびきり優雅に、そしてロマンチックに、私たちの恋を彩ってくれる。
FIN


