堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「じゃあ、この後もきみの時間をもらっていい?」
「えっ……?」

 私はぽかんとして、カップをソーサーに戻す。志門さんは穏やかな瞳で私を見つめている。

「俺もウィーンは久々だから、夕方まで観光しようと思ってるんだけど……ひとりよりはふたりの方が楽しいかと思って。もちろん、瑠璃が嫌じゃなければ」
「嫌、ではないですけど……」

 海外旅行自体が初めての私に対し、志門さんはドイツ語が堪能だし、ウィーンに詳しい。一緒に観光できたら百人力だ。

 ……でも、どうしてそこまで親切にしてくれるのだろう。

「じゃ、決まりだな。瑠璃はこの後どこに行こうと思ってた?」
「あ、えっと……」

 私はバッグの中から小さなガイドブックを取り出し、彼に渡した。

「とくに順番は決めていなかったんですけど、行きたいところにはペンで印がついてます」

 志門さんはページをパラパラめくり、視線をガイドブックに落としたまま独り言のように語る。

「瑠璃は初めてだから、やはり王道スポットか……。オペラ座を見学してからベルデヴェーレ宮殿で美術品鑑賞もいいし……旧市街をゆっくり散歩するのも……」

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