堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
カフェを出て少し歩くと、路上で客待ちをしている馬車が目に留まった。
「一般の観光客でも乗れるんでしょうか?」
「ああ、フィアカーだな。観光用の馬車だから乗れるはずだ。乗りたい? ……って、聞くまでもないな。ザッハートルテを前にした時と、同じ目をしてる」
「えっ……?」
クスッと笑った志門さんが御者に話しかけ、私たちは本当に馬車に乗れることになった。二頭の馬が引く可愛らしい馬車で歴史を感じる石畳の上をゆったり進むのは、お姫様にでもなった気分だ。
「嘘みたいです……本物の馬車に乗れるなんて」
「実は馬車に乗るのは俺も初めてだ。注目されている気がして、ちょっと照れるな」
確かにすれ違う人々が、私たちに視線を注いでいる。でも、馬車というより志門さんの端整な顔立ちが注目を集めている気がしないでもない。
「どこへ行くんでしょう?」
「瑠璃に見せたいと思っている場所を、御者に伝えてある。順番に回ってくれるはずだよ」
「すごい……なんて贅沢な時間」
感動して思わず嘆息する。隣に座る志門さんが、そんな私を見て微笑んだ。