堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「気に入った?」
「もちろん。本当にウィーンって素敵な街……来てよかったです」
「俺もだ。……瑠璃のお陰で、抱えていた憂鬱が吹き飛んだよ」
空を仰いで晴れやかな顔をする彼。
抱えていた憂鬱って、なんなんだろう。聞いてみたいけれど、せっかくの楽しい時間に水を差すことになるのも嫌なので、口には出さないでおいた。
馬車に乗ってのんびりと市街を巡り、モザイク屋根や繊細な彫刻が美しいゴシック建築の寺院を見たり、逆にきらびやかな装飾を排除した世紀末建築の建物を見たり。
志門さんは目的地に着くたびにそれぞれの建築様式について熱く語ってくれるのだけれど、いつも途中でハッとなり、『ごめん。つまらない話をして』とばつが悪そうに苦笑する、その姿がかわいらしかった。
そんな楽しい建造物巡りの中でも、とくに印象に残った場所がある。
パッチワークのようにカラフルなデザインの壁が目を引き、その壁にはツタが絡まっていたり、窓から木が飛び出していたりするファンタジックな集合住宅『フンデルトヴァッサーハウス』だ。