堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「なんだか不思議な建物……。おとぎ話に迷い込んだみたいです」
「だろう? これをデザインしたのは、フンデルトヴァッサーという芸術家兼建築家。もしも瑠璃が建物を作ろうと決めたとしたら、まずは直線を引こうするだろう? しかし、彼の作品はいつもこんなふうに大胆な曲線を使うんだ。初めて見た時、自分の頭の固さを思い知らされた気がしたよ」

 志門さんが馬車から建物を見上げ、目を細める。そのフンデルトヴァッサーという人は、きっと彼が特別に敬愛する建築家なのだろうな。

「私も、この遊び心たっぷりの外観、すごく好きです。心が自由になれる感じがする。でも、私の持っているガイドブックには載ってなかったな、ウィーンにこんな場所があるなんて」
「市営住宅だからかもな。実際にここで暮らしている住人がいるから、中までは見ることができないんだ。でも隣にミュージアムが併設されているよ。彼の絵画も見られるし、行ってみないか? お腹がすいたらカフェもある」
「はい、行きたいです!」

 私たちは一旦馬車を降り、ミュージアム『クンストハウス・ウィーン』に入ることにした。

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