堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
そこは、私のイメージする美術館とはひと味もふた味も違う、不思議な空間だった。足元の床は、〝床というものはまっすぐだろう〟という固定観念をあざ笑うかのように波打ち、壁もすべて丸みを帯びていて、角がない。建物を構成するすべてが曲線だ。
そこではフンデルトヴァッサー本人の作品を展示する常設展はもちろん、現代の芸術家たちによる企画展も開催されていて、芸術に疎い私でも見ているだけでわくわくする個性的な作品ばかりで、最後まで飽きなかった。
館内を見学した後は、緑あふれる中庭のカフェテラスで遅めのランチを取った。
私はサンドイッチとスープを。志門さんは野菜たっぷりのカレーを頼み、朝からケーキとコーヒーしか入っていなかったお腹を満たした。
「ここにもザッハートルテがあるみたいだけど、いいの?」
ポップな青色の丸テーブルで向かい合う志門さんが、小さなメニュー表を見ながら私に尋ねる。
「はい。食べたい気持ちはありますけど……もうお腹いっぱいで」
「そうだな。天気もいいし、昼寝でもしたい気分だ」
「ふふ、ですね」