堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
お腹は満腹で、テラスに降り注ぐ午後の陽ざしはぽかぽか暖かい。居心地がよすぎて、なんだかまったりしちゃうな。
満ち足りた気分でなにげなくテラスの風景を眺めていたその時、テーブルとテーブルの間を通れずに困っている、車いすの老婦人が目に留まった。
私は考えるより先に席を立ち女性のもとへ行くと、テーブルと椅子を少しずらして車いすが通れる間隔を作った。
「これで大丈夫ですか?」
そう言って微笑みかけてから、あっと思う。……ここはウィーンだった。日本語が通じるわけないじゃない。
だからといってドイツ語は無理だから、せめて英語で……と、自分の薄っぺらい脳内和英辞典を必死でめくっていたそのときだった。
「ありがとう。助かるわ」
「えっ……?」
女性の口から滑らかな日本語が飛び出して、意表をつかれた私は固まった。
女性の髪は白髪交じりのブロンドで、目の色はブルー。志門さんのように混血というわけでもなさそうだけれど……。
「日本語の上手なお友達がいるのよ。彼女のご主人が日本人なの」
「あっ、そうだったんですか……。びっくりしました。お席までお連れしましょうか?」
「大丈夫、自分で行けるわ。本当にありがとう」