堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「でも母は、父がいないというコンプレックスを私たち兄妹にまったく感じさせないくらい、毎日笑顔でいました。ひとりでいる時には泣いてたかもしれないけど、その顔を子どもには絶対に見せなかった。だから、私と兄も自分たちがそれほど可哀想な境遇とは思わずに生きてこられたんです。母は私の自慢です」
そう言ってふふっと笑うと、志門さんの表情もやわらいだ。
「瑠璃のお母さんは、優しくて強い人だな。きっと、きみもその血を引いているよ」
「そうかな……。そうだといいんですけど」
それでも母には遠く及ばないと思いながら、食後のコーヒーに手を伸ばす。そんな私を志門さんはいつまでも無言で見つめていて、なんだろうと照れくさくなる。
「そろそろ行きますか?」
沈黙に耐えかねてそう言うと、彼は我に返ったようにハッとして頷いた。
「……ああ。御者と馬たちも待ちくたびれているかもしれないな」