堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「いえ……。私の方こそ」
ボソボソとそんな返事しかできない私に、志門さんが一歩近づいた。そして、大きな手をそっと私の頬に添えて上を向かせると、切なげな視線を私に向けた。
「瑠璃に、頼みがあるんだ」
「頼み……?」
「ああ。今夜、二十時、ホーフブルクに来てほしい」
ホーフブルク……? 確か、ガイドブックに大きく特集されていた、壮麗な宮殿の名だ。
幾世紀もの長い間、ヨーロッパの大部分を統治していた華麗なる一族、ハプスブルク家の歴代皇帝の住まいで、今では人気の観光名所となっている。
「どうしてその場所へ……?」
「そこで夜通し行われる仮面舞踏会に俺は招待されているんだが……集まるのは独身男女ばかりの婚活パーティーみたいなもので、そこで結婚相手を見つけろと、お節介な親族から発破をかけられているんだ。……でも、俺はそんなパーティーに集まる女性には興味を持てそうにない。……瑠璃。きみに惹かれてしまったから」
ドキン、と胸が大きく高鳴った。
志門さんが、私に惹かれている……?