堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
彼に見つけてもらえなければ、私はひとりぼっちだ。そうなった時のことを考えると、心細くてたまらない。
……出よう。ここは私なんかがいるべき場所じゃない。
せっかく誘ってくれた志門さんには申し訳ないけれど、このウィーンで彼と出会えたことだけを綺麗な思い出にして、胸にしまっておこう――。
人波に押されるようにしてホールの中ほどまで来てしまっていたけれど、私はその隙間を縫って、開け放たれた出入り口の扉に向かって逆戻りしていく。
ときどき人にぶつかっては「ソーリー」と謝り、なんとか扉の前まで来た、その時だった。
「見つけた」
そんな声とともに、誰かに後ろから腕を掴まれた。
えっ……? この声、もしかして。
信じられない思いでゆっくり振り向くと、上質な黒のタキシードに身を包み、シルバーの魅惑的なマスクを着けた、長身の男性がそこにいた。
目を凝らして、目元のマスクから覗く瞳を見つめると、その色はミステリアスな薄茶色。髪の色も、彼と同じ美しいダークブロンドだ。
「志門さん……?」
「ああ。ありがとう、瑠璃。来てくれて」
まったりとした色気のあるバリトンボイス。間違いなく、彼本人だ。まさか、この人混みから私を見つけてくれるなんて……。