堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 何も言えずにただ胸を熱くしていると、出入り口の扉がゆっくり閉められた。オーケストラの音楽がいったん止まり、ホールの端にマイクを持った司会者が現れる。

 ドイツ語なので内容は不明だが、明るく宣言するような口調から察するに、おそらく、舞踏会の開会を告げているのだろう。

 それが終わるのを見届けてから、志門さんが私に微笑みかける。 
 
「さあ、時間だ。踊ろう、瑠璃」
「はい……」

 私は魔法にかけられたように頷き、彼に手を取られて再びホールの奥へ向かっていった。オーケストラが、ゆったりしたワルツを奏で始める。仮面をつけた男女が、思い思いに踊りだした。

 私たちはその間をすり抜けるようにして歩き、さきほど〝玉座みたい〟と思った一段高い場所のすぐ手前までたどりつく。

 志門さんは正面から私を見てうやうやしく一礼をすると、下からそっと私の手を取り、反対の手を背中に添えた。おずおず志門さんの腕に掴まると、彼の真剣なまなざしと、至近距離で視線が絡む。

「大丈夫。俺にすべて任せて」

 彼はそう宣言すると、ダンス初心者の私を優しくエスコートしながらステップを踏み始めた。

 ダンスの経験もなく、ワルツのリズムに慣れない私でも、彼と視線を合わせ、次の動きを優しく指示してもらうだけで、それなりに踊れている気分になれるから不思議だ。

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