堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「だって、私にウィーン菓子の素晴らしさを教えてくれたのは、世良さんですもん。本場のケーキをいくつか食べて、もちろんその美味さに感動して帰ってきたんですけど、このお店のケーキの味にも、ますます愛着が湧きました」
どうしても辛い思い出が際立ってしまう旅行ではあったけれど、見てきた景色や食べ物が素晴らしかったことに変わりはない。世良さんに伝えたウィーン菓子への思いも、心からの本音だ。
「……ありがとな」
無表情ながらもなんとなく穏やかな声音に、きっと喜んでもらえたのだろうと胸をなで下ろす。
しかし、これ以上世良さんと話すこともないので、私は早々といとまを告げる。
「じゃ、私そろそろ行きます。また明日から頑張って働きますのでよろしくお願いします」
「ああ。神谷がいないと寂し……じゃなくて、寂れた店に見えるからな」
……寂れた店? 私がいないくらいでそんなことないだろう。裏口から入る前に正面から店を覗いた時、店内には相変わらず大勢のお客さんがいたもの。