堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 しかし、乗り込んですぐ、車内に漂うきつめの芳香剤に鼻腔を刺激され、再び軽い吐き気を覚えた私は行き先も言えないままハンカチで口元を押さえた。

「家……確か、大森の方だったよな?」

 私がしゃべれないのを察して、世良さんが尋ねてくれる。こくこく頷くと、彼が運転手さんに「とりあえず大森方面」と伝えてくれた。

 車内の空気に少し慣れて楽になってくると、運転手に改めて自宅の住所を告げ、それから世良さんに謝った。

「すみません……ご迷惑おかけして」

 それでも彼のことだから、「別に」とか「気にするな」とか、そんな返事が返ってくるのだろうと、私は勝手に思い込んでいたのだけれど。

「妊娠でもしてるのか?」

 ぼそりと彼が放ったセリフの意味がよくわからず、私は怪訝な眼差しを彼に向ける。

「え……?」
「いや、違うならいい。ただ、匂いに敏感になっているようだから……つわり、なのかと」

 つわり……? まさか、そんなはずはない。

 だって、思い当たるようなことをした覚えは……志門さんと過ごした一夜のことだけだ。

 そのひと晩で妊娠してしまうなんて、あるわけないよね?

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