堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 そういえば、瑠璃のアルバイト先も、ただの洋菓子店ではなく中欧菓子店と言っていたような……? しかし、ここが彼女の職場だなんて、そんな偶然あるはずがないよな?

 そう思いつつ、ちょうど店から出てきたストレッチャーに乗せられている人物に目を凝らす。

 武骨なコックシャツ姿の男に付き添われてぼんやり宙を見る若い女性……あれは、まさか。

「――瑠璃!」

 そうと気づいた時には、俺は彼女のもとに駆け寄っていた。そばにいた男を押しのけて、ストレッチャーにすがりつく。

「ようやく会えた。しかしどうしてこんなことに?」
「え……志門、さん……?」

 青白い顔をした瑠璃が俺の姿を目に映し、ゆっくり瞬きを繰り返す。よく見ると、顔色が悪いだけでなくかなり痩せてしまっている。

 今の彼女に色々質問するのは酷だと思い、ただ溢れる愛しさのままにジッと彼女を見つめていると、背後にいた男が唸るように言った。

「誰だ? アンタは」

 俺は振り返り、おそらく瑠璃の同僚なのであろうその男にハッキリ告げた。

「彼女の婚約者です。京極志門と申します」
「こっ……婚約者だと?」
「ええ。なので、救急車には私が同乗を」

 近くにいた救急隊員に向けてそう言うと、救急隊員は「お願いします」と頷き、瑠璃のストレッチャーが車内に運び込まれる。俺はその後に続いて、救急車に乗り込んだ。

< 85 / 226 >

この作品をシェア

pagetop