【電子書籍化&コミカライズ】悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
「あんたはまたそう言う……」

 しかしベルネは全てを告げることを諦める。口にしたところで労力の無駄だと感じたのだろう。ロシュはベルネさえ呆れさせるほどの力があるらしい。さすが攻略対象である。

(攻略対象の食生活を守るためにも、一日も早く理想の学食に近づけないとね!)

 カルミアもまた静かに闘志を燃やしていた。


 大量のカレーと白米、そしてパスタが茹であがる。
 作り立ての料理が放つ熱、そして作り手たちが込める熱。厨房はこれまでにないほどの熱に溢れていた。

「カレー一皿、四十番で願いします。次、パスタ一皿、四十番で注文入ります」

 昼休みを過ぎてからというもの、注文は途絶えることなく押し寄せる。
 カルミアたちはひたすらに料理をよそった。米をよそい、カレーを流し込み、時には底をつきそうになっていたカレーを追加で作り上げた。カレーは噂が噂を呼び、興味を持った人たちや、早くもリピーターが続出しているらしい。パスタは馴染みのある食べ物なので安定の人気といった印象だ。

(売れ行きからして、この二つは常設メニューにしていいみたいね。パスタは日替わりで味付けにバリエーションを加えてもいいかしら)

「ベルネさん、私は出来あがったものを運んできます」

 ベルネとの連携もカルミアが想像した以上の効力を発揮し、一人で調理にあたるよりも早く完成させることが出来ている。

「あたしは人前に出るつもりはないからね。せいぜいあたしの分まで働きな、小娘」

 ベルネにとっては皮肉なのかもしれないが、カルミアとしては有り難いことだ。この短期間でベルネは率先して皿まで洗うほどの成長を見せ、カルミアも安心して料理を運ぶことが出来ている。
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