猫になんてなれないけれど
「うん、美味しい」

見た目だけじゃなく、期待通りか、それ以上の味だった。

やっぱり、ここのお刺身は美味しいな。

続けて、他の刺身も順に味わっていく。

どれもこれも美味しくて、嬉しい気持ちで味わっていると、ふと、冨士原さんが私を見ている視線に気がついた。

「・・・えっと・・・なにか」

向けられた眼差しは、やけに優しく感じるけれど。

なんだろう、と尋ねると、冨士原さんは微笑んだ。

「いや、真木野さん、猫みたいだなって思って」

「え」


(・・・猫?)


「なんというか、すごく、旨そうに魚を食べるから」


(・・・魚!?)


美味しそうに、魚・・・お刺身を食べる猫・・・。

猫好きの人に「猫みたい」って言われることは、もしかしたら、褒め言葉なのかもしれない。

だけど、私はそもそも犬派だし、「魚を食べる姿が猫みたい」って表現されても、正直微妙な心境だ。

動物的な、野性味溢れる食べ方をしてたのかなとか思ってしまうし・・・。

「・・・猫は、お刺身にわさび醤油はつけないと思います」

「ああ・・・そうですね。すみません。なんか、かわいくて」

「えっ」


(・・・かわいい!?)


やっぱり、冨士原さんなりの褒め言葉だったんだ・・・。

なんとも言えず、とても複雑な気分だけれど、「かわいい」と言われたことは、正直ちょっと嬉しくて。

けれど、それで喜ぶ自分に悔しい気持ちも感じてしまう。

熱くなった、頬の温度を冷ましたい。

「・・・そ、そういえば。冨士原さん、その後、婚活って進んでますか」

混乱する気持ちと思考を転換させたくて、私は、思い浮かんだことを口にして、それまでの話題を変えた。

最近は、萌花の件で忙しかったと思うけど、それももう解決したし、冨士原さんは元々真面目に婚活しているようだったから、その後のことが気になったのも理由だけれど。
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