猫になんてなれないけれど
問いかけられて、私は運転席に目を向けた。
綺麗な横顔に、ドキッとしてから私は答える。
「そうですね・・・、それなりに疲れてはいますけど。でも、心地いい感じの疲れです。お酒も料理も美味しかったし・・・よく、眠れるような」
「・・・そっか。それならいいんですが」
優しい笑顔。
冨士原さんは、無表情でも綺麗だけれど、やっぱり、笑った顔が素敵だなって私は思う。
「冨士原さんも疲れてるんじゃないですか。劇のことで、職場に行ったんですもんね」
「ああ・・・、あれは、大した事ではなかったので。大丈夫ですよ」
「そうですか・・・」
話しながら、ふと思う。
そして私は、気になったことを聞いてみる。
「冨士原さん。その、劇っていうのは、私も見に行けるものなんですか」
「・・・・・・」
しばしの沈黙。
冨士原さんは、私をチラッと見てから返事する。
「来れるか来れないか、という質問の答えなら来れることにはなりますが。来ないでください。恥ずかしすぎる」
少し、動揺が見えた彼の横顔。
冨士原さんは俳優さんではないのだし、元々乗り気じゃなさそうだった。
演じることも見られることも、恥ずかしいとは思うけど。知能犯役の冨士原さんがかっこいいのは確実で・・・。
「・・・見たいです」
「いや、本当に・・・・・・というか真木野さん、恋人の職場に行くなんて、苦手そうな感じがしますが。意外と平気なんですか」
「・・・・・・」
(・・・苦手だった・・・)
言われてはっと気がついた。
深く考えていなかったけど、開催場所は、彼が働いている警察署。そして多分、会議室とか、そこまで広くはないスペースだろう。
受講者は高齢の方ばかりのようだし、人数も、多くてきっと数十人。私が行ったら、目立つことは確実だ。
「彼女です」と名乗って訪れるわけではないものの、彼の同僚が大勢いるであろう状況で、冨士原さんを見に行くことを想像すると・・・・・・明らかに苦手な状況だった。
「・・・止めておきます」
「賢明です。お互いのために」
冨士原さんは、安心したようにほっと静かに息を吐く。
そして、少し時間をおいてから、「一応、確認させていただきますが」と真面目な顔で話を続けた。
「彼女の立場を意識せず、『見たい』と発言したということは・・・真木野さん、もしかして、オレが彼氏だってことを忘れてましたか」
いつもよりも低い声。
ちょっと怒っているかもと、ドキリとしながら返事する。
「い、いえ。私の想像力が足りなかったというだけで、忘れてたわけじゃないですよ。見に行きたいって思ったことは、本当に、事実だし・・・」
綺麗な横顔に、ドキッとしてから私は答える。
「そうですね・・・、それなりに疲れてはいますけど。でも、心地いい感じの疲れです。お酒も料理も美味しかったし・・・よく、眠れるような」
「・・・そっか。それならいいんですが」
優しい笑顔。
冨士原さんは、無表情でも綺麗だけれど、やっぱり、笑った顔が素敵だなって私は思う。
「冨士原さんも疲れてるんじゃないですか。劇のことで、職場に行ったんですもんね」
「ああ・・・、あれは、大した事ではなかったので。大丈夫ですよ」
「そうですか・・・」
話しながら、ふと思う。
そして私は、気になったことを聞いてみる。
「冨士原さん。その、劇っていうのは、私も見に行けるものなんですか」
「・・・・・・」
しばしの沈黙。
冨士原さんは、私をチラッと見てから返事する。
「来れるか来れないか、という質問の答えなら来れることにはなりますが。来ないでください。恥ずかしすぎる」
少し、動揺が見えた彼の横顔。
冨士原さんは俳優さんではないのだし、元々乗り気じゃなさそうだった。
演じることも見られることも、恥ずかしいとは思うけど。知能犯役の冨士原さんがかっこいいのは確実で・・・。
「・・・見たいです」
「いや、本当に・・・・・・というか真木野さん、恋人の職場に行くなんて、苦手そうな感じがしますが。意外と平気なんですか」
「・・・・・・」
(・・・苦手だった・・・)
言われてはっと気がついた。
深く考えていなかったけど、開催場所は、彼が働いている警察署。そして多分、会議室とか、そこまで広くはないスペースだろう。
受講者は高齢の方ばかりのようだし、人数も、多くてきっと数十人。私が行ったら、目立つことは確実だ。
「彼女です」と名乗って訪れるわけではないものの、彼の同僚が大勢いるであろう状況で、冨士原さんを見に行くことを想像すると・・・・・・明らかに苦手な状況だった。
「・・・止めておきます」
「賢明です。お互いのために」
冨士原さんは、安心したようにほっと静かに息を吐く。
そして、少し時間をおいてから、「一応、確認させていただきますが」と真面目な顔で話を続けた。
「彼女の立場を意識せず、『見たい』と発言したということは・・・真木野さん、もしかして、オレが彼氏だってことを忘れてましたか」
いつもよりも低い声。
ちょっと怒っているかもと、ドキリとしながら返事する。
「い、いえ。私の想像力が足りなかったというだけで、忘れてたわけじゃないですよ。見に行きたいって思ったことは、本当に、事実だし・・・」