猫になんてなれないけれど
あの時私は、3人の男性と話をしていた。

その中で・・・確か、いつも「優しすぎる」って、「女性に振り回される」って、話をしていた男性だ。


(だけど、どうして今更・・・)


男性はさっき、「気持ちを伝えた」「なのにあなたは無視をした」って、私にそんな台詞を言った。

まさか・・・あれからずっと、そんな風に考えて、恨みを抱いていたのだろうか。なんとも言えない恐怖を感じた。

「職業柄、人の顔を覚えることは結構得意なんですよ。間違いがないようでしたら、あの時、真木野さんが私を選んだことはご存じだろうと思うのですが」

氷のような表情で、冨士原さんが問いかけた。

男性は震えながらも、「でも」と言って話し出す。

「ま、真木野さんは、あの時、僕と一番話をしていて。だから、本当は、ぼ、僕と・・・一緒になるはずだったのに」

冨士原さんは、目を見開いて驚くような顔をした。

けれどそれは一瞬で、すぐに冷えた表情になる。

「・・・すごい自信だな。わけてもらいたいくらいだけど」

「だ、だって、僕が一番・・・」

「・・・話をしたって?そんな理由で・・・独りよがりもいいとこだ」

恐ろしいほどの低音の声。

冷ややかな視線を向けられて、男性は、ガタガタと震えながらその場に小さくうずくまる。

「・・・冗談でも、先ほどのような台詞は二度と口にしないでいただけますか。彼女は、オレの恋人だ」

男性は、小さく何度も頷いた。

そして、落ち着かない様子でズボンを探ると、ポケットの中のスマホを落とした。

「・・・あっ!」

ガツッ、と、床にぶつかる衝撃音。スマホの画面が明るく光る。

その、明るいスマホの画面には、いつ撮ったものなのか、マンションのエントランスを歩く私の姿が映っていた。


(・・・!?)


背筋にぞっと悪寒が走った。知らないうちに写真を撮られていたことも、それを、こうして持ち歩かれていたことも。

「あ・・・こ、これは・・・・・・っ」

「・・・真木野さんですね」

冨士原さんがスマホを拾い、冷えた目線で画面を見つめた。男性は、さらにガタガタ震えだす。
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