猫になんてなれないけれど
一人になると、緊張が途端に解けて、どっと疲れがおりてきた。

すごい一日だったなと、改めて、服を脱ぎながら考える。

いつも通り仕事に行って。冨士原さんと食事に行って。そこで・・・まさかの告白を受けて、彼氏彼女の関係になり。

幸せで、ふわふわとして・・・キスもされた。甘い記憶。

だけどその後、婚活パーティーで出会った男性に遭遇をして、突き飛ばされて、冨士原さんが来てくれて・・・。

起こった全ての出来事が、現実じゃなかったようにも感じてしまう。

心と身体に甘い記憶だけを残しておいて、あとはシャワーで流してしまいたい。



シャンプーの香り。石鹸の香り。

いつもの自分と違う香りに包まれて、彼のバスルームは少しそわそわしてしまう。

だけど、バスルームを借りて、シャワーを浴びて正解だった。

ものすごく疲れていたし、恐怖心や嫌な気持ちがなくなったわけではないけれど、表面に張り付いていた分だけは、流せたように思うから。



脱衣所に出て、フカフカのタオルを借りて、用意してくれたパジャマに袖を通してく。

半袖であろうパジャマだけれど、私には、七分袖の状態だった。


(やっぱり、だいぶブカブカだよね・・・)


確かに私は、女子の中では背丈はあると思うけど。

手の長さも足の長さも、当然ながら富士原さんには敵わない。

ズボンの裾も、引きずらないように何度か外側に折っておく。
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