猫になんてなれないけれど
「・・・考えてたんだ。一昨日、ストーカーの事件があって、昨日の美桜の様子を見てて。できるだけ、美桜のことを一人にしたくないと思った。けど、その理由でこれから一緒にいようとか、結婚しようって言うのは何かが違う気もしてて。

だけど今朝、こうして一緒に美桜と過ごして、幸せというか・・・・・・毎日こうならいいのになって、自然と思いが湧いてきて。・・・もちろん、一昨日のことも昨日のことも、無関係って訳ではないけど。とにかく、ただオレが・・・・・・これからずっと、美桜と一緒にいたいんだ」

「ーーーー・・・」

心づもりがなかったことが突然自分に起こってみると、こんなにも、頭の中って真っ白になってしまうんだ。

だけどその「真っ白」は、空洞のようにポカンと寂しいものではなくて、ピカピカと、明るい光が溢れるような感覚で。

なにも思考は働かないのに、感情だけが動いてく。

涙が勝手に頬を伝った。

「・・・美桜」

彼の右手が伸びてきて、頬の涙を拭ってくれた。

温かい熱に、私の頬が包まれる。

「その・・・なにも準備しないまま、いきなり言って驚かせたとは思うけど。オレと・・・・・・結婚してください」

真っ直ぐな目で告げられて、私は、すぐにコクリと頷いた。

だって、すごく嬉しくて、愛しい想いが溢れ出て。

どうしよう、なんて考える隙もないくらい、心がそれを受け入れたから。

「・・・よろしく、お願いします・・・」

「・・・・・・うん」

息を吐き、ほっとした顔で彼が笑った。

張り詰めていた、緊張が解けたように。

嬉しそうに、優しく笑ってくれるから。私はまた、泣きそうな気分になった。

「ありがとう。・・・美桜」

もう一度、彼が名前を呼んだ。

惹きつけられた私の肩を、彼は、自分の元へと引き寄せた。

そのまますぐに口づけられて、彼の熱が、舌先から、喉の奥へと入り込む。

身体が、甘く痺れてく。

頭の中が蕩けてく。

たまらずに、彼の腕をぎゅっと掴むと、絡めた舌が、更に奥深くまで潜り込む。

息があがった。

それでもまだ、もっと、って、彼のキスを求めたい。

何度も深く、重なるように続くキス。

互いの温度が上昇し、彼の手が、私の胸へと触れていく。

身体が震え、彼の腕を掴み直した瞬間にーーーーー・・・、私は突然ハッとして、唇を僅かに離し、彼から少し距離を取る。

「あ、あの」

「ん・・・?」

「時間、そろそろ・・・」
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