猫になんてなれないけれど
プロポーズを受けてから、5日目の土曜日。午後1時過ぎ。

ここは、私が勤める、相澤内科クリニックの診察室。

・・・と言っても、今日は私が非番の日なので、白衣ではなく私服姿で、そして、診療時間終了後に、1人ではなく冨士原さんと2人で訪れていた。

私と冨士原さんは、患者用の椅子に並んで座る。

その向かいには、医師用の席に座る相澤先生。

先生は、私と彼の報告を聞き、目をまんまるに、口を大きくポカンと開けた。

「・・・・・・えっと。ごめん。今なんて」

「・・・だから。美・・・、真木野さんとオレが結婚するから。今日は、その報告に来たって言った」

「・・・」

一瞬の間をおいて、相澤先生は「えーーーー!!!」と大きな声で叫んだ。

両耳がキーンとなって、思わず顔をしかめてしまう。

「な、なんで!?え、というか、いつから付き合ってたの?」

「・・・・・・。一週間前だな、ちょうど」

「はあ!?」

冨士原さんの返答に、相澤先生は椅子ごと倒れそうな姿勢になった。

体勢をなんとか立て直してから、先生は話を続ける。

「それは、付き合って一週間で結婚決めたってこと!?」

「そう。正確には3日だけど。・・・まあ、付き合う前から結婚したいとは思ってたから」

さらりと返した冨士原さんの言葉を聞いて、相澤先生は「そ、そうか」と額を掻いて、ほんのり頬を赤くした。

普段冷静な冨士原さんからこういう話を聞くことは、昔からの友人として、恥ずかしさがあるのだと思う。

私も、ちょっと照れくさい。

「・・・いや、けど、いつの間に。何があったんだ?最近大和はクリニックにも来てなかったし・・・。真木野と、他で繋がりがあったのか?」

「あ、はい。それは・・・」

先生の疑問を受けて、私は、婚活パーティで偶然会って、うっかりカップル成立となり、その後、主催者からのプレゼントで食事に行ったことを話した。

冨士原さんは、パーティに参加したことを「相澤には絶対内緒にしてほしい」と私に言っていたけれど、「結婚するとなったら馴れ初めは話す必要があるだろう」と、考え方を改めて、情報解禁となっていた。
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