猫になんてなれないけれど
「弟は、初対面だとあんまり話さないと思うけど・・・奥さんは話しやすいし、子どもたちも人懐っこい。会うとしても、緊張しなくて大丈夫。・・・って、オレも、逆の立場だと美桜には言えるな」

2人で笑った。

お互いに、過剰な緊張は必要ないのかもしれない。


(・・・あ、そうか。もしかして・・・)


ここでふと、婚活パーティで交わした会話を思い出す。

あの時確か冨士原さんは、パーティへの参加をご両親に勧められたと言っていた。

弟さんのご家族が、とても仲良い印象だから、冨士原さんにも結婚を・・・婚活を勧めたのかもしれない。

その予想を伝えると、彼は一瞬キョトンとした後に、「ああ」と言って、思い出したような顔をする。

「・・・ごめん。それ、適当に誤魔化したんだな。両親というか、家族に勧められたのかって聞かれて頷いたような覚えがあるけど。知り合いに会って、恥ずかしかったっていうのもあるし・・・、あの時は、こんな風になるとは思わなかったから」

そう言って、冨士原さんはバツの悪そうな顔をする。

最後の台詞に関しては、私も同じ気持ちでいたし、婚活パーティで知り合いに会うということが、恥ずかしいのもよくわかる。

私はあの時、冨士原さんとの遭遇があまりにも衝撃的だったから、恥ずかしいっていう感覚は、どこかへいっていたけれど。

「じゃあ・・・冨士原さんが、パーティに参加した理由って・・・?」

勧められたわけではないのなら。

尋ねると、彼は少し照れくさそうな顔をした。

「・・・自分の意思だよ。結婚したくて。勧められたわけではないけど、弟を見て憧れたことは確かだな。奥さんとも仲良いし、子どももまあ・・・、見てると結構かわいいし」

照れ隠しをするように、冨士原さんは眼鏡のブリッジを持ち上げた。

なんとなく、一番の理由は最後の言葉のような気がした。
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