猫になんてなれないけれど
その後も特に変化なく、約1週間が経った頃。

萌花から、「相談したいことがある」とメールアプリに連絡がきた。

そこには、「お店で、できれば冨士原さんにも相談させてもらいたい」と、「今更ごめん」という言葉があった。

それ以外の詳しいことは、何も書かれていなかったけど・・・。


(もしかして、何かあったの・・・?)


ずっと、「大丈夫」だと言い続けていた萌花からのSOSだ。

しかも、警察官である冨士原さんに相談したいということは・・・何かがあったとしか思えずに、私はとても不安になった。

緊張しながら、すぐに冨士原さんにメールを送った。

すると、数分後には返信がきて、翌日「はなの季」に行くと約束をしてくれたのだった。




それが、金曜である今日だった。

仕事を終えて、私が「はなの季」へ到着したのが20時で、冨士原さんも、ほどなくしてスーツ姿で現れた。

こんな時でも、会えばドキッとするのは変わらない。だけど今日は、そういう想いは胸の奥にしまっておくことにする。

挨拶を交わし、冨士原さんと二人でカウンター席に腰掛ける。ふっと、空席の左隣に目を向けて、私はあれ?と思って萌花に尋ねた。

「そういえばめずらしい。門脇さん、もう帰ったの?」

「19時閉店」の張り紙をしているから、他のお客さんが帰ったことはわかるけど。門脇さんは、当たり前のようにいると思った。

「うん・・・やっぱりね。門脇さんには聞かせたくなくて。椿も、今日は実家で預かってもらってるの」

そう言うと、萌花は私と富士原さんに冷たい緑茶を出してくれた。富士原さんが車なので、「お酒はまた今度」と笑顔で言いながら。

「それで、相談というのは」

富士原さんが問いかけた。萌花は、覚悟を決めたように頷いて、ゆっくりと話を始めた。

「実は先日・・・椿が突然、知らない男の人に道ばたで紙袋を渡されそうになったんです。椿が言うには、紙袋の中にはたくさんのお金・・・お札が入ってるように見えたって言っていました」

「お金?知らない人から突然?」

驚いた私の言葉に、萌花は頷く。

「椿は『いらない』って言って、すぐに逃げたから別に何もなかったんだけど・・・。実は、少し前から揉めている相手がいるんです。多分、これまでのことも今回も、その相手が・・・誰かを使ってでしょうけど・・・仕掛けたことだと思います」

「揉めてる相手・・・」

「うん・・・。でも、簡単には口にできない事情があって・・・これまでずっと黙っていました。けど、もう、私だけじゃどうにもできないのかもって思って・・・。すみません、ずっと大丈夫って言っていたのに、結局、こんな風に頼ってしまって・・・」
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