猫になんてなれないけれど
幹斗議員の言葉と態度に、萌花は大きなショックを受けた。
けれどそれでも、幹斗議員を嫌いになることはできなくて。そして、宿った命はなくしたくないって思った。
その気持ちを幹斗議員に伝えると、それまで、「僕の子じゃない」と言っていたのに、血相を変えて「おろせ!」と脅迫してきたそうだった。
それでも萌花は、宿った命を育みたくて、椿ちゃんを産むと強く決意した。そして、彼の「絶対に認知なんてしない」という言葉を受けて、未婚の母になる道を選んだそうだ。
「後でわかったのは、幹斗さん、その時ちょうど伊集院朱雀(いじゅういんすざく)元首相のお嬢さん・・・澄美華(すみか)さんと婚約が決まった頃だったの。ようするに、私は・・・澄美華さんと二股をかけられていたんだね」
芸能人ではないけれど、幹斗議員は若手イケメン政治家として有名なので、なんとなく、これまでの経歴を知っている。
元々は、伊集院元首相の議員秘書をしていたけれど、元首相が政界引退を決めた後、その地盤を受け継いで出馬をし、見事当選を果たして国会議員になったのだ。
「そっか・・・。伊集院家に婿入りしてからの出馬だったんだよね。国会議員になるために、最初から澄美華さんとの結婚を狙ってたのかもしれないね・・・」
「うん・・・だと思う。出会った時は『愛川』っていう名字だったんだけど、私と別れて間もなく『伊集院』になったから。本当に驚いたし、愕然とした。だけどもうね、こういう人だったんだって、ある意味開き直れたというか。もう、絶対にこの人には頼らない、椿にも絶対に、この人が父親だって話さないって、あの時は、そう心に決めたの」
それから8年。
幹斗議員からはもちろん、萌花からも、一度も連絡しなかった。
お互いにもう、過去のこと。
萌花にとっては、二度と思い出さないと堅く決意した相手。実際、思い出すことなんてほとんどなかったそうなのだけど・・・。
「一ヶ月位前かな、突然彼から連絡がきて」
冨士原さんが、顔を上げてグラスを揺らした。萌花は、深呼吸して話を続ける。
「今の私の連絡先なんて知らないはずなんだけど・・・幹斗さんはお金もあるしね、どうにかして調べたんだと思う。お店に電話をかけてきて・・・椿のことを黙っててほしいから、一千万、受け取ってほしいって言われたの」
けれどそれでも、幹斗議員を嫌いになることはできなくて。そして、宿った命はなくしたくないって思った。
その気持ちを幹斗議員に伝えると、それまで、「僕の子じゃない」と言っていたのに、血相を変えて「おろせ!」と脅迫してきたそうだった。
それでも萌花は、宿った命を育みたくて、椿ちゃんを産むと強く決意した。そして、彼の「絶対に認知なんてしない」という言葉を受けて、未婚の母になる道を選んだそうだ。
「後でわかったのは、幹斗さん、その時ちょうど伊集院朱雀(いじゅういんすざく)元首相のお嬢さん・・・澄美華(すみか)さんと婚約が決まった頃だったの。ようするに、私は・・・澄美華さんと二股をかけられていたんだね」
芸能人ではないけれど、幹斗議員は若手イケメン政治家として有名なので、なんとなく、これまでの経歴を知っている。
元々は、伊集院元首相の議員秘書をしていたけれど、元首相が政界引退を決めた後、その地盤を受け継いで出馬をし、見事当選を果たして国会議員になったのだ。
「そっか・・・。伊集院家に婿入りしてからの出馬だったんだよね。国会議員になるために、最初から澄美華さんとの結婚を狙ってたのかもしれないね・・・」
「うん・・・だと思う。出会った時は『愛川』っていう名字だったんだけど、私と別れて間もなく『伊集院』になったから。本当に驚いたし、愕然とした。だけどもうね、こういう人だったんだって、ある意味開き直れたというか。もう、絶対にこの人には頼らない、椿にも絶対に、この人が父親だって話さないって、あの時は、そう心に決めたの」
それから8年。
幹斗議員からはもちろん、萌花からも、一度も連絡しなかった。
お互いにもう、過去のこと。
萌花にとっては、二度と思い出さないと堅く決意した相手。実際、思い出すことなんてほとんどなかったそうなのだけど・・・。
「一ヶ月位前かな、突然彼から連絡がきて」
冨士原さんが、顔を上げてグラスを揺らした。萌花は、深呼吸して話を続ける。
「今の私の連絡先なんて知らないはずなんだけど・・・幹斗さんはお金もあるしね、どうにかして調べたんだと思う。お店に電話をかけてきて・・・椿のことを黙っててほしいから、一千万、受け取ってほしいって言われたの」