猫になんてなれないけれど
「いっ、一千万!?8年間なにも言ってこなかったのに?なんで今更・・・」

幹斗議員は、椿ちゃんの認知をしなかった。

そしてそのまま澄美華さんと結婚をしたのだし、幹斗議員としても、今更萌花や椿ちゃんと関わることは避けたいはずだ。

それなのに、どうして今頃そんなことを言い出してきたのだろうか。

「うん、多分だけど・・・幹斗さん、最近グラビアアイドルの女の子と噂になってるの知っている?」

問いかけられて、私は「ううん」と返事した。芸能ニュースは、基本的には興味がないのだ。

「ああ。三波くららさんですね」

冨士原さんが真面目な顔で返答し、私はなんだかショックを受けた。

冨士原さんが芸能ニュースを知っていることも、グラビアアイドルのフルネームを知っていることも。そういうジャンルには、全く興味がないと勝手に思っていたからだ。


(もちろん、私の勝手なイメージだけどさ・・・)


そんなイメージ、冨士原さんには迷惑だろうと思うけど。私はこっそり不貞腐れた。

「最近、幹斗議員の周囲は色々と騒がしいですからね。先日は不適切発言でたたかれていましたし・・・それで、その噂が何か」


(あっ・・・なるほど!)


どうやら、グラビアアイドルに興味があるのではなくて、政治的関心があり、その関連で情報を得ているようだった。

その見解が合っているかはわからないけど、私は、そう思うことにする。

「幹斗さん、入り婿じゃないですか。しかも、政治家として伊集院元首相の地盤を受け継いで当選してる。幹斗さん自身を支持してる人ももちろんいるんだろうけど、やっぱり、元首相の信念を受け継いでるから・・・っていう理由で、支持してる人が多いと思うんです」

「うん・・・。そうかもしれないね」

私と、富士原さん二人で頷く。

「そんな立場で不倫なんて、澄美華さんはもちろんだけど、元首相のことも支持者のことも、裏切るようなものだから。実際、今週刊誌でものすごくたたかれててね。ここで万一、椿の存在が知られたら・・・幹斗さんの信用は、がた落ちになると思うんだ」

幹斗議員には、澄美華さんとの間にまだ幼い子どもが2人いる。

イクメンを謳って育休を2回取ったのは、割と記憶に新しい。

「子育てを妻に任せきりにするなんてとんでもない!」と言っている幹斗議員が、椿ちゃんを認知せず、全ての責任から逃れたなんて知られたら、信用はがた落ちどころかマイナスになるだろう。
< 75 / 169 >

この作品をシェア

pagetop