猫になんてなれないけれど
「・・・なるほど。それで、幹斗議員は口封じの手段として、萌花さんに一千万を受け取ってほしいと提案してきたわけですね」

冨士原さんの確認に、萌花は頷く。

「別に、口封じのためのお金はいらない。けど、だからって、椿のことは誰にも言わないって話はしたんですけれど・・・。金銭のやりとりがないと、幹斗さんは安心できないんだと思います。お金を受け取った事実があれば、私が『言わない』というか・・・『言えない』理由を作れるって考えたんだと思います」

椿ちゃんの父親が、幹斗議員だという事実。

萌花はあえて「言いたくない」だけであり、「言えない」理由はないだろう。

けれど、向こうの要求通りにここでお金を受け取れば、強制的に「言えない」って契約上の理由が生まれる。

萌花はずっと、今まで一人で頑張ってきた。幹斗議員からそんな理由で今更お金を受け取るなんて、絶対にしたくないだろう。

冨士原さんは、「そうですか」と納得したように頷いた。

「やはり、これまでの件も全て幹斗議員が仕組んだことかもしれないですね。口コミ工作やクレームで店の評判を落として金銭的に窮地に立たせ、萌花さんに一千万を受け取らせようと考えた。

けれど、頑として受け取らない萌花さんに困った彼は、椿ちゃんに無理矢理現金で渡そうとした・・・その可能性が大きいですね」

「はい。さすがにそんなことはって、考えもしたんですけれど・・・」
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