猫になんてなれないけれど
「確かに幹斗議員は怪しいですし、主犯だろうと思われますが・・・。今は証拠が不十分です。とりあえず、落ち着いてください」

「~~~っ」

「うん。美桜、落ち着いて」

「・・・・・・」

2人に言われ、私は渋々椅子に座った。

腹立たしい気持ちはあるけれど、呼吸を整え、冷たい緑茶を一口飲んで、なんとか心を落ち着かせる。

「・・・そう、今は怪しいだけなの。証拠という証拠はないし、幹斗さんが自分で認めることはないだろうし、クレーム男も、黙秘を続けているみたいだし」

「それに・・・」と、萌花は、ため息をついて話を続けた。

「全てが推測通りでね、幹斗さんが犯人だったら・・・そんな人がお父さんだって椿が知ることを考えるとね、被害届とか・・・警察に言って本格的に調べてもらうのは、ちょっと躊躇しちゃうんだ。多分、マスコミに知られて大ごとになると思うから。

そうしたら、椿のことも調べられたり、隠し子だって、週刊誌に載ったりするんじゃないかとか、それこそ色々考えちゃって・・・。そうするとやっぱり、『幹斗さんが犯人だ』って決定づけをされるのも、怖いって思うところがあって」


(・・・・・・ああ・・・そうか・・・)


萌花がこれまで、「心当たりの相手」を隠していた理由がやっとわかった。

「心当たりの相手」である、幹斗議員を守ろうとしていたわけじゃない。萌花はずっと、椿ちゃんのことを守ろうとしてたんだ。


(『簡単に口にできない』って、そうか・・・そうだよね・・・)


相手が幹斗議員じゃなかったら、萌花はすぐ、警察に相談できていただろう。

だけど、相手が元恋人で、椿ちゃんの父親で・・・今、不倫騒動の渦中にある話題の若手国会議員だ。

全てを明らかにする決断は、簡単にできることじゃない。


(・・・でも・・・)


「だからって、このままなにもしないわけにもいかないもんね。向こうは、そうゆうこと何も考えずに椿ちゃんを利用しようとしてきたわけだし・・・」
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