猫になんてなれないけれど
「・・・でも、真木野さんのことはやっぱり少し心配ですね。今日も、幹斗議員が目の前にいたら、向かって行きそうな感じがしたので」

「・・・」


(あの時のこと・・・)


話の途中、あまりにも幹斗議員が腹立たしくて、一人で怒りだした記憶があった。

そして、萌花と冨士原さんになだめられたような気が・・・。

恐ろしいことに、あまり覚えていないけど。

もしかして、すごい形相だった?

冨士原さんの前だというのに、理性を無くして怒りまくっていたかもしれない。


(・・・さ、最悪だ・・・)


「すみません・・・。ダメですね。前に、注意されていたことなのに」

「ああ・・・いや。心配だけど、ダメだと言いたいわけではなくて。こちらこそすみません。その・・・・・・冗談も上手く言えなくて」

そう呟いた横顔は、困ったような、悩んでいるような表情だった。

私は、どの部分が冗談だったのかもわからずに、答えを求めるようにそのまま彼に目を向けた。

「もちろん、先日のクレーム男性のような相手に向かっていくのは危険ですから、そういう行為は絶対に止めてほしいのですが。今日の、ああいう場面で熱くなるのは、オレは・・・・・・嫌いじゃないですよ」


(・・・・・・嫌いじゃない・・・)


これは、好意的な意味なのだろうか。

それとも、ただ、フォローを入れてくれただけ?

どっちにもとれる言葉だなって思うから、探るように、心は余計に揺れ動く。

冨士原さんが、自分を「オレ」って呼ぶことも、初めてじゃないけど私の気持ちを動揺させた。

「・・・あの・・・ありがとうございます・・・」

どういう言葉を、返せばいいのかわからずに。

ただ、冨士原さんが私を気遣ってくれたのはわかるから、そのことに、お礼の気持ちでそう言った。

冨士原さんは、ふっと笑う。

「いえ。お礼を言われるようなことは何も。・・・真木野さんは真面目だな」
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