猫になんてなれないけれど
そして、それを萌花に提案。了承を得て青龍さんに相談すると、二つ返事で引き受けてくれたそうだった。

青龍さんが話を引き継ぐ。

「とりあえず、言い逃れができないように証拠を集めることにしたんです。富士原先輩に、義兄さんのことを色々調べていただきました」

すると、予想していた通り、幹斗議員が飲食店の口コミサイトで「はなの季」の悪評を書いた痕跡がいくつも見つかった。

もちろん本名ではなくて、複数のアカウントを取得して、偽名で書いた投稿だ。

「・・・やっぱり、そうですか・・・」

真実を聞いて、萌花はショックを受けていた。予想はしていたことだけど、改めて事実を聞くのは辛いと思う。

また、ガラス片のクレーム男とのやり取りは、SNS上で見つかった。幹斗議員は、「高単価のバイト」という名目で相手を探し、雇った男にあのようなクレームをつける依頼をしていたそうだ。

こちらももちろん偽名を使って。金銭のやり取りも、お互い、素性がバレないように偽名の口座を使用していた。

「・・・ほんとに、親族としてお恥ずかしい限りです。申し訳ありません・・・」

青龍さんが頭を下げると、萌花は慌てて首を振る。

「青龍さんが謝ることでは。こちらこそ、ここまで調べていただいて・・・。証拠がないまま幹斗さんに直接聞いても、絶対に認めないって思ってましたから・・・。ありがとうございます。色々と、大変だったんじゃないですか」

尋ねる萌花に、冨士原さんは無表情で「いえ」と答え、右手で眼鏡を押し上げた。

「幹斗議員の裏アカウントやパスワードは、簡単に探ることができたので。アカウントは複数持っていましたが、パスワードのバリエーションは単純です。全て、彼の名前と母親の名前、2人の生年月日の数字を混ぜて、並びを変更しているだけでしたから」


(・・・そ、そうなんだ・・・)


奥さんやお子さんのものは一つもなくて、全て自分と母親の名前と生年月日・・・なんともいえず、幹斗議員の残念度をアップさせていた。


(でも・・・お母さんのことを調べたり、それがわかってもパスワードを割り出したりとか・・・やっぱり、大変だったんじゃないのかな)


数学的な計算は、私にはわからないけれど。10ケタ前後の数字とアルファベットの組み合わせパターンなんて、莫大な数になるはずで。

そしてそれらの解析が、「簡単」だなんて思えないけど・・・。
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