猫になんてなれないけれど
いつの間にか、時刻は21時を過ぎていた。

大事な話を終了し、4人でほっとひと息ついた時、私のお腹が「ぐー」と鳴る。

うわ、と、思わずお腹を押さえると、みんながクスッと笑顔になった。

「ごめんね、美桜。何も食べずに遅くまで・・・。一品ものばかりだけれど、料理はすぐに出せるから。よかったら、みなさん召し上がって行ってください」

そう言って、萌花が割烹着の袖を捲ると、青龍さんは「すみません」と右手を上げた。

「せっかくですが、これから会食の予定が入っているんです。また今度、日を改めて伺わせていただきますよ」

「ああ・・・そうなんですね。残念ですけど・・・では、また今度。是非」

「はい。申し訳ありません」

頭を下げると、青龍さんは胸ポケットからスマホを取り出し電話をかけた。

すると、ほどなくしてお店のドアがノックされ、ゆっくりと引き戸が開き、執事のような初老の男性が現れて、こちらに向かって頭を下げた。

「お待たせいたしました。青龍様」

「ああ、ありがとうございます。すぐに行きます」

笑顔でそう答えると、青龍さんはカバンを持って立ち上がり、私たちに向かって挨拶をした。

萌花は何度もお礼を言いながら、店の外まで見送りに行く。私と冨士原さんも続いて一緒に外へ出た。


(お、おお・・・)


店の前には、黒く、ピカピカと光った大きな車が停車していた。

これは、完全に高級車。多分、外国製だと思われる。

先ほどの執事のような男性が後部座席のドアを開けると、青龍さんは、笑顔で私たちに右手を上げて会釈して、車の中に乗り込んだ。

ちらりと見えた車の中は、ゴージャスそうな紫色の内装だった。シャンデリアのようなものが見えたのは、気のせいではなかったと思う。

執事のような男性は、私たちに深く一礼した後で、運転席へと移動して、ゆるやかに車を発進させた。

徐々に、車が小さくなっていく。
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