猫になんてなれないけれど
23時を過ぎ、そろそろお暇しようということで、私と冨士原さんは、萌花に「ごちそうさま」とお礼を言って席を立つ。

萌花は「こちらこそ、色々とありがとうございました」と、少し涙目になって呟いた。

「・・・じゃあ、私は車を取ってきますので。真木野さん、家までお送りするのでお待ちください」

私にそう声をかけると、冨士原さんは一足先に店の外へと出て行った。

私は、一歩遅れて、その後ろ姿に「はい」と返事を投げかけた。

店のドアがピタリと閉まる。

萌花は、今度はにやにやと、嬉しそうな顔で私に言った。

「もしかして・・・もう、冨士原さんと付き合ってる?」


(・・・は!?)


「ま、まさか!なんで。そんなわけがないでしょう」

「そうなの?冨士原さんが『送る』って美桜に声をかけたのが、彼氏みたいに、すごく自然だったから」


(・・・えっ!?そ、そう?)


違うけど。

全くもって違うけど。そう見えたなら・・・なんか、ちょっと嬉しい気がする。

だけど肯定できることではないし、私はしっかり否定する。

「それは・・・あれだよ。警察官だから、きっといろんな人を車に乗せたりするんだろうし、多分、そういう台詞は言い慣れてるんだと思う」

「うーん・・・そうなのかなあ・・・。まあ、いいけど」

相変わらずにやにやしながら、萌花は割烹着を脱いで髪を整えた。

萌花のこういう動作は色っぽく、思わずぼんやり見とれてしまった。


(・・・でも・・・萌花には、そういう風に見えたのかな)


もう、付き合っているみたいとか。

私に声をかけた時の冨士原さんが、彼氏のように自然な感じだったとか。

思わず嬉しくなったけど、あくまでも、それは萌花の見解で。実際は違うわけだから、あまり期待させないでー、と思う気持ちも同時にあった。
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