王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「……どうしましょう、イートン伯爵」
「そうやって私に意向を聞いてくれるのは君ぐらいだ。大事に育てているのに、ケネスもクロエも勝手なものだよ」
その恨み言は分からないでもないが今はいらない。
目でそう訴えると、伯爵は再び深いため息をつく。
「こう言っては何だが、レイモンド君があっさり侯爵邸にはいれるとは思えないんだ。侯爵邸は貴族街でも王城に近い位置にある。雇い人もほどんとが住み込みの地域だ。平民がふらふらしているだけで目立って仕方がないと思うんだよ。ましてクリス嬢もいるなら」
「……探しに行ってみましょうか」
「そうだな。今無茶したってなんにもならない」
ふたりは頷き、貴族街へ馬車を走らせる。
ふたりは貴族街に入って間もなく、見つかった。子連れの平民は、貴族街ではひどく目立っていたし、平民街を抜けるまで歩いてきたことで、クリスは疲れ切っていて、ぐずぐずとレイモンドの服の裾を引っ張っていたからだ。
「レイモンドさん、クリスさん」
「ロザリーちゃん!」
真っ先にロザリーに気づいたのはクリスだ。久しぶりに自然に抱き着いてこられ、ロザリーはなぜかホッとした。
まだ誰かに甘える気持ちを失っていない彼女に、安堵したのだ。
「ロザリー」
むしろレイモンドの方が、切羽つまった顔をしている。