王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
そして三人が馬車で屋敷に戻ると、別の報せが待っていた。

「旦那様、ロザリンド様、大変です」

「なんだ。クリス嬢なら連れて帰って……」

「アイザック様が行方不明となりました!」

ロザリーも伯爵も、息が止まるかと思った。
冗談であって欲しいともう一度執事を見つめたが、彼は沈痛な面持ちで続ける。

「先ほど、一報が入りました。出立して二日目に、休憩先の宿舎を出てしばらくして山賊に襲われ、ザック様と護衛は散り散りに逃げたそうです。荷物の馬車とひとりの護衛は無事にグリゼリン領についたそうなのですが、アイザック様と護衛ふたりが今だに行方不明だと」

執事の声が、頭の奥の方に反響する。
つい先日、前向きに与えられた未来を生きようとする彼を見送ったばかりだ。
なのにまた、さらなる悲劇を彼を襲うなんて。

「嘘です……。どうして?」

「山賊に……? あの辺に賊が住み着いているなんて聞いていないぞ」

さっと顔を青ざめ、イートン伯爵は手早く言いつける。

「ケイティを呼べ。それと早馬を準備しておけ」

「……ロザリーちゃぁん」

クリスが、震えながら抱き着いてくる。彼女のおかげで、ロザリーは取り乱さずに済んだ。ギュッと抱きしめ返し、自分にも言い聞かせるように言う。

「大丈夫です。ザック様が死ぬわけありません」

それでも声が震えるのは止められなかったし、不安を消すこともできなかったのだが。

< 89 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop