恋を知らない花~初恋~
よく見ると私の着ていた服がハンガーにかけられている。

仕方がない、ベッドから下りて隣の部屋に行こうと、したときノックする音が聞こえる。
慌てて私はベッドの上に戻り座ったまま布団を前にかけた。

「あ、おはようございます。体調大丈夫ですか?」

Tシャツにジーンズ姿の真中さんが入ってきた。
良かった、真中さんの家だったのか。
いや、安心している場合ではないのになぜかほっとしている自分がいる。

「おはようございます。あのー、私すごくご迷惑をおかけしましたよね?しかもこの格好…」

上半身の布団をめくって見せた。

「あっ、そのっ、何にもしてません。」

慌てて顔の前で手を振りながら答える。

「その、タクシーで寝てしまわれて起きなかったのでうちに連れて来てしまいました。すいません。あの、それで…。」

「あっ、いえ、何となくそういう心配はしてません。それより着替えてると言うことは吐いたりしてしまったのではと思って…。」

あっ、でもスーツはかけられてる。
記憶がないから全く検討がつかない…。

「えーっと、その、吐いてはいません。タクシーからはすいません、ぼ、俺がふらふらだったので体を支えてこの部屋まで来ました。」

真中さんは顔から耳まで真っ赤にしてうつむいたままこちらを見ない。
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