ボードウォークの恋人たち
ハルの目的は院長の座・・・長い付き合いの彼女・・・

確かにおかしいと思ってた。

黙って居なくなり、6年もの間連絡1つしてこなかったハルがいきなり帰ってきて私の婚約者だとか一緒に暮らすのだとかと言い出して。

この話に裏があることは薄々気が付いていたもののそれを認めたくなかったばかりに目を瞑ってきたのだ。

そうか、ハルの目的は私が持つ”二ノ宮グループの血”だったのね。

「治臣ったら誕生日当日だけはあなたのご機嫌取りをしたけれど、前日も翌日も同期の女医の彼女と深夜まで一緒にいるんだからどっちが本命かなんて誰の目にも明らかよね。ふふ、お気の毒さま。」

「それにーー」
「はい!終了!!」

空気を切り裂くようにパンパンっと大きく手を打った音が辺りに響く。

まだ何かを言おうとする女医も驚いたのか話すのを止めた。
私たちの間に入り大きく手を打ったのは美しくも厳しい顔をした浜さんだった。

「元山先生、うちのスタッフの昼休みの時間は終わりです。先生もこんなところで無駄口をたたくお時間があるのでしたら新しいレスピレーターの設定とダヴィンチの操作をマスターしてください。7E病棟の主任がキレかかってましたよ、今度の大学から派遣されてきたドクターはメイクはうまいけど医療機器一つ満足に使えないって」

「なっ・・・」みるみるうちに女医の顔が赤くなっていく。

身に覚えがあったのかそれまで顎をしゃくるように自信満々で高圧的な態度だったのに、嘘のように首元まで羞恥の赤に変わっている。
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