ボードウォークの恋人たち
眠れぬ夜を過ごし、学会の行われているホテルに戻ったハルは研究を手伝ってくれていたスタッフのひと言に凍り付いた。

「舘野先生、やっぱり諸川先生と付き合ってたんですね。付き合い長いって聞きましたよ。結婚も考えてるって」

「誰がそんなでたらめを」

「え、でも、昨日の学会もお揃いのポケットチーフで並んで写真撮影に応じてたし、諸川先生も嬉しそうにそう言ってたし・・・違うんですか」

ポケットチーフ!
そうか、あれにそんな意味があったとは。

発表前に沙乃と顔を合わせた時にあいつの胸には俺と同じポケットチーフはなかった。
発表後の写真撮影の時に巻いたのか。
実の母と義妹にしてやられた。どちらが主導したのかそんなことはどうでもいい。
水音がこんな写真を見たらどう思うのか、考えただけで頭が痛くなる。

「諸川沙乃は義妹だ。恋人じゃない」

とにかく今できることをして、時間を作って水音の居どころを探さないと。

朝から深夜まで続く面会、会合、会食。分刻みのスケジュールをこなしながらあちこちに電話をかけ水音が来ていないかと聞くも誰も居場所を知らなかった。
そして思いついたのが福岡先生だった。

恥を忍んで「出勤しているか確認して欲しい」とお願いしてみると、快諾してくれた。

「イケメンドクターも可愛い婚約者には形無しだね」と笑われたがその通りなのだから苦笑するしかなかった。

福岡先生のおかげで水音が変わらず出勤しているのがわかって安心はしたけれど、居場所がわかったわけではない。

頭痛がする。ハルはこめかみをもみながら目を閉じた。
沙乃の妨害もあり学会の数日前から眠れていなかった。昨夜は帰らぬ水音が心配で気が付いたら夜が明けていた。

身動きが取れないこの身がもどかしい。
明日も水音を探す時間がとれない・・・。
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