ボードウォークの恋人たち
「とにかく、水音のいたあのアパートの部屋は引き払う手続きが終わってるし、知ってる通り荷物のほとんどを運んである。もう戻れないから水音はしばらくここに住むしかないんだよ」

むぅうう。
口をへの時に曲げた私にハルが子供を諭すような口調に変えた。

「とりあえず結婚の話は置いておいていいよ。それよりあのアパートに大問題があることを水音はきちんと理解してる?」

ハルが笑いを引っ込めて真面目な顔で真正面から見つめてきた。

「水音は昨日夜勤で知らなかっただろうけど。水音の部屋近くのアパートの女性の部屋にも空き巣が入ったんだ。住人が帰宅したら運悪く犯人と出会ってしまって持っていた刃物で腕を切られたって」

「えっ?」
ハルの話が本当なら、それはちょっと治安が悪いどころの内容じゃない。

「それでその人は大丈夫なの?」

ハルがああと頷いてくれたことに安堵しつつもあまりに物騒な話で背筋が寒くなってきた。

「幸い傷は大したことなかったし犯人も捕まったけど…被害者の心の傷は大きいよな。その前の殺人事件の犯人も逮捕はされてるけれど、あの近くで別の犯罪がまた起こった。あの辺りじゃ空き巣以外にも事件は起きているだろう。もうあの周辺は危険地帯だよ」

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