"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「あぁ、うん。……いいんじゃない?」
千葉崎にしては歯切れが悪い言い方だった。
「何の話してんの?」
さっきまで試合をしていたせいか、タオルで汗を拭きながら俺たちのそばに来た酒井。
「ゆ〜君が今週末に合コンに行くって話」
「ちょっと待て。何で知ってんだよ?」
「言ったじゃ〜ん?そういうのは筒抜けなんだよ」
一体どこから情報が漏れているのか。
恐ろしい。
合コンは一回参加すると何故か立て続けに企画されるもので、自然と呼ばれる回数も増えて来た。
さすがにもう疲れて来たからこれで最後にしようかとは思っているけど。
……こんだけ合コンに参加して、結果、誰とも進展ありませんでしたっていうのはどうなんだ?
しかも、酒井にまで知られた。
千葉崎にバレるのは時間の問題だったけど、酒井にバレるのは何というか。……何だろう。
「急にどうしたの?これまでそういうの断ってたのに」
「彼女作ろっかなぁ〜って思ってんだって!」
「お前は本当にペラペラと〜!」
態度も軽ければ、口も軽い千葉崎の口を縫い付けてやりたい。
そんなことを思っていると、コートから俺の名前を呼ぶチームメイトの声が聞こえて来た。
「ほらほら、次の試合しよーってさ!ゆ〜君のチームじゃん?いってら〜」
ひらひらと手を振る千葉崎は無視した。