"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
そして、週末。
居酒屋の一室に男女八組。
無難に大学の話とかどんな人がタイプだとか常套句を並べ、人狼ゲームとか王様ゲームとかしたりして。
気になる子はいないかってことに意識すると疲れるけど、単純に飲み会だと考えれば楽しい。
たまになら、こういうワイワイするだけの集まりもいいな、と思う。
結局、気になる子はいなかったけれど。
「次、カラオケ行くぞー!」
「俺ちょっと風に当たってから入るから部屋番号だけ送っといて」
「了解!」と、友人は居酒屋からすぐ近くのカラオケ店にみんなを連れていった。
……のだが、一人だけ女子が俺の所に戻ってきて「大丈夫?」と心配してくれる。
「ありがとう。大丈夫。暫くしたら行くよ」
頷いたその子はカラオケ店に入っていった。
あー。だめだ。飲み過ぎた。
このままでは千葉崎と酒井に馬鹿にされる未来が待っている。
そう思うと飲むペースが早くなってしまった。
吐きそうとか意識が朦朧としてるってわけでもないが、二十になったばかりの酒に慣れていない体にはキツい。
体が熱くて、ボーッとしている。
「情けな」
自分以外の男連中も酔ってはいたがテンションが高くなっていただけで通常運転なのに。
しょうもない理由で飲み過ぎて、酔いが醒めるのを外で待つとかダサすぎて言えない。
なけなしの気力で「大丈夫」なんて言ってみたものの、これは結構時間がかかりそうだ。
かといって、帰るわけにもいかないし。
はぁ、とため息をついて下を向いていると。
「大丈夫?」
と、女子の声が聞こえてきた。
「ほんと大丈夫だから。寒いし、みんなと先に部屋入ってて」
さっき心配してくれた子が戻ってきたんだろうと、俺は顔も上げずに言った。