"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

土寄せの手伝いをしてもらった代わりに、相沢家の庭のお手伝いをすることにした。

大洋は自室に籠もって仕事をしているらしい。

少しずつわかってきたことだが大洋は重役に付いているが、会食や出張、会社でのトラブル等どうしても外に出なければならない場合を除いては在宅勤務に徹しているらしく家にいないことの方が珍しいらしい。


家の中に大洋がいることにホッとしつつ、庭の手入れをする。

手入れをすると言っても琴音が毎日手入れしているので雑草は殆どない。庭に生えた木の枝を切ったりするくらいだった。

庭の手伝いが終わって、今は何を植えているのかという話になって、植えている作物の説明をしてくれた。

しかし、それは畑やプランターのものばかり。

実は相沢家には畑以外に赤煉瓦で囲まれた花壇がある。

あれだけ嬉々として畑の話をしていたのに花壇には触れないのが不思議だった。

花壇の中を覗けば何かの芽が幾つか生えている。


「前、ここに花植えてましたよね?この芽も花ですか?」


そう聞いた瞬間、琴音が困ったように笑った。


「その花壇は洋ちゃんのだからはっきりとは答えられないんだけど、多分、向日葵」


大洋が花を育てているところが全く想像できない俺は唖然とした。

作物を育てるところももちろん想像できないが、それよりもずっと想像できない。

琴音が花を育てていると言えば納得できるが、大洋が育てていると言われるとしっくりこない。

けれどいつだったか、一人で全部育てているわけではないと言っていた。

それが花だったのか。


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