"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


「ねぇ、どうして向日葵だけ植えると思う?」

膝に頬を乗せ、悪戯っぽく聞いてくる姿にドキリとしつつ「夏だから、ですかね」と答えた。

夏の花と言われれば大抵、向日葵を連想するんじゃないだろうか。大洋もきっとそういう理由で育てているんじゃないだろうか。

琴音は「残念」と言って笑った。


「かくいう私も直接理由は聞いたことはないんだけど!」

なんだそれ、と思わず芸人のようにずっこけかける。


「じゃあ合ってるかも知れないじゃないですか!」

「どうかなぁ?多分違うと思うな〜」

「えー。じゃあ、奥さん的にはどういった理由があると思うんですか?」

「そうだなぁ」


膝の上に肘を置き、頬を手で包み、見上げる。
そこには何もない。

芽はまだほんの数センチしか顔を出していない。

それなのにまるで、成長した向日葵がそこに存在するかのように琴音は何もない空を見上げたのだ。


「向日葵は成長しきるまでは太陽を追いかけるみたいに見つめるって知ってた?」

「聞いたことはあります」

実際に見たことはないけれど、蕾だったりまだ若い向日葵は太陽の方を向くと聞いたことだけはあった。


「じゃあ、向日葵の花言葉はなんでしょうか?」

「花言葉?」
 
一つも知らない。

誰かに花をプレゼントしたことも、花を育てたこともない俺には無縁なものだ。

< 186 / 259 >

この作品をシェア

pagetop