"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

「向日葵に何かあるのか?」

どうして向日葵を植えたのか、大洋に直接聞けばわかるかもしれない。

その日、カレーをご馳走になりながらどこかで聞けないかと考えてはいたけれど、実際に聞くことはできなかった。

今も大洋は何かと鋭い視線を送ってくるし、俺に対してだけ態度が悪いのは健在だ。

けれど、最初のような怖さはもうとっくになかった。

他愛無い話も琴音を交えてという条件は必須だがするようになっていた。

いけるんじゃないか、と思った。

だけど、妻ですら直接聞けないことをただの隣人で、言ってしまえばただの他人の俺が聞き出せるのか。


俺はその日、結局聞くことさえ出来なかった。


ただ、向日葵の花言葉の意味を聞いてきたことを考えると、向日葵を植える理由と関係があることは確かだったので家に帰ってから検索エンジンに「向日葵、花言葉」と打ってみる。

花の色や送る花の本数によっても意味が違う。
向日葵の全般的な花言葉だけでも複数あった。


「情熱」

「憧れ」


ふーんと思いながら、なんだかしっくり来ず、違うサイトに目を通す。



「愛慕」

「………あなただけを見つめる」


『向日葵は成長しきるまでは太陽を追いかけるみたいに見つめるって知ってた?』

あれはヒントだったのかと気づく。


向日葵が太陽を見つめるように、花言葉は"あなただけを見つめる"。


おまけに愛慕。
愛し、慕う。

つまり、深く愛するという意味だ。


あなただけを見つめるということはその人だけを愛するということ。

その人だけを深く、愛するということ。


もしも、大洋が向日葵を植える理由がその花言葉にあるのなら、そのメッセージの送り先はただ一人だ。


俺は深く、盛大にため息をついてスマホを放り投げた。


なんだ、ただの惚気じゃん。
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