美術室のユーレイ
「『見てない』というより『見れない』って言った方が正しいか」
「見れない?」
私がそう聞くとユーレイは小さく頷いた。
「あたしはここの場所から動けないからね」
そう言って手を大きく上にあげた。
「え?そうなの?」
「そうだよ。あたしが動けるのはここの廊下と」
手をおろし、すぐ隣にある部屋を指さした。
「ここの教室だけ」
「ここって…」
そこは空き教室。
体育祭や文化祭で毎年使うものや、書類なんかがあるいわゆる倉庫みたいな部屋。
「ここの教室と、この廊下しか動けないの?」
「そうだよ。廊下もこの教室に面しているところだけ」
そんな動ける範囲が指定されているユーレイもいるんだ。
だから美術室に飾ってある絵が見れないんだ。
「ユーレイ全員にそういうのがあるの?」
「ううん、悪霊とかそれと川村美斗は自由に動き回ることができる。もちろん、ほかのユーレイも。あたしがちっと特殊なだけ」
「そうなんだ。でもなんであなただけ?」
私がそう言うとユーレイはクルっとドアの方に体を向けた。