溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「どうしたんだろう………何か忘れ物かな………」
風香は不思議に思い、寝室から出て玄関の方へと向かった。
すると、やはり柊が帰ってきていた。
「おかえりなさい!今日はどうしたの?」
「あぁ、風香ちゃん。ただいま。と、言ってもまた出掛けるんだけどね」
そう言った柊の顔は、どこか緊張している様子で、視線も鋭かった。
風香は彼の雰囲気の違いを敏感に察知していた。
「柊……?何かあったの?」
「いや………風香ちゃん、今時間いいかな?話したい事があるんだ」
「うん。私も話したい事があったから丁度言いかも」
「話したい事?」
「うん………柊の話は………?」
「俺の話は………」
彼が仕事中に帰ってくるほどだから、何か緊急なのだろう。風香は、心配そうに彼を見つめる。すると、その視線に気がついた柊が、フッと小さく息を吐いて微笑んだ。
「そんな怖い顔をするほどの事じゃないよ。今の仕事が忙しくてね。張り込みを順番にすることにしたんだ。だから、泊まり込みの準備をしたかったんだ。風香ちゃんを一人にするのは心配だから迷ったんだけどね………」
「そうだったんだ。でも、私は大丈夫だよ。心配しないで行ってきて」
「ありがとう。もし不安だったら友達の美鈴ちゃんにお願いして一緒に居て貰って欲しいなとも思ってたんだ」
「そうだね……後で連絡してみる」
柊は余程風香の身の危険を心配しているようだった。彼が安心して仕事に行けるのならば、美鈴の都合がつけば家にお邪魔するのもいいかな、とも思った。