溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 先ほどの男は雇い主と言っていた。
 と、言うことは風香達を誘拐するよう命令した人物がいるという事だ。
 何が目的なのか。そんな事はわかるはずもない。
 けれど、風香の扱い方を考えれば、相手が好意的ではないのは一目瞭然だ。
 何が目的なのか、これから何が起こるのか。考えるだけで怖くなってしまう。


 カッカッ………。
 風香にとって恐ろしい音が聞こえてくる。
 部屋の外から数人の足音と気配を感じた。それはどんどん大きくなり、風香の部屋の前で止まった。

 風香は逃げ出したい気持ちから、体がビクッと動いたけれど、拘束されているので移動する事も出来ない。

 怯える瞳で、開く扉を見つめる。

 そこから入ってきた人物は、とても上機嫌な様子で風香の目の前までやってきた。


 「長い間寝てたけど、寝心地はよかった?」
 「…………ぇ………」


 風香は目の前の現実が受け止められず、小さな声を上げた。

 そこには、先ほど風香達を襲った数人のと男、そして中央には彼女が居た。


 「おはよう。風香」


 しばられている風香の姿を見て楽しそうに微笑む彼女。風香は、声も出なくなっていた。


 風香を見下ろしていたのは、美鈴だった。



 

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