溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
30話「赤ワインは憎しみの香り」
30話「赤ワインは憎しみの香り」
美鈴は片手にワイングラスを持っており、とても陽気な様子で風香の目の前のソファに座った。
「美鈴………どういう事なの………?」
「この状況を見たらわかるでしょ?私が、彼らの雇い主ってわけ。まぁ、元々はお客様だけど」
「…………どうしてこんな事………」
「わからないでしょうねー?私もずーっとあなたの前で演技していたから。さっきの捕まえた時も迫真の演技だったでしょ?」
ハハハッと声に出して笑う美鈴を、風香は混乱した表情で見ることしか出来なかった。
彼女は何を言っている?
この状況で何故笑っていられる?
そう震える体で思いつつも、頭ではわかっていた。
彼女が全ての首謀者だという事を。
「………美鈴が全部やったの?」
「まー……全部と言ったら全部ね。でも、貴方が思っている全部ではないかも」
そう言うと、美鈴は考えこむフリをしながら、ゆっくりと足を組んだ。そして、まるで王女様のように肘掛けに片ひじを置いて、手に頬を付けて話し始めた。