溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
32話「守りたい」





   32話「守りたい」





   ☆☆☆



 「少し車の中で待っててくれるか?」


 しばらくして落ち着いてきた風香を見て、柊は立ち上がり近くにいた女性警察官を呼び、風香をパトカーに連れていくように促した。
 これから、数人が同時に逮捕されたのだ。柊はいろいろな仕事があるのだろう。
 柊は立ち上がり、風香の元から離れようとした。


 「何やってんだ!青海!」
 「イッ!!………何するんですか、滝川さん!」


 現場検証に戻ろうとした柊を、白髪まじりの髪でがたいがいい男性が柊の頭を拳で叩いた。柊は本当に痛かったようで、頭を抱えながら滝川と呼ばれる男性を涙目で見て抗議していた。
 風香は滝川が柊の上司であるとすぐにわかった。


 「被害者の女性を放っておくな。おまえの恋人なんだろう」
 「そうですけど。最後まで現場を………」
 「被害者を守るための警察だろ!さっさと連れて帰れ!」
 「痛っ……だから、叩かないでくださいよ!」


 柊は抗議をしながらも、そう言うと滝川は腕を組んで納得した表情を見せた。
 風香はそんな様子を唖然としながら見ていると、滝川がフッとこちらを見た。



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