溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 「いろいろ話を聞きたいから、今度また署まで来てもらいます」
 「はい。……よろしくお願い致します」
 「その時に2人には説教だから、覚悟しておくように」
 「え!?説教………何でですか?」
 「それは『戻ってから』わかる事です。まずは、体を休めてください。あなたには辛い思いをさせすぎた。反省しています」
 「………それは………」


 滝川の話している事がわからず、風香が問い掛けようとしたけれど、柊が「大丈夫だから」と言って帰るように促した。柊は、滝川や和臣などと少し会話を交わした後、風香の手を引いてその場を後にしたのだった。


 パトカーで1度署に戻り、柊の車で自宅に帰った。
 風香が「ありがとう」や「滝川さんの話しって何?」など話をしようともしたが、何から話したらいいのかわからず、頭が混乱したまま静かに車に乗ってた。
 柊もその時は何も話そうとはしなかった。


 美鈴に誘拐されていた間、梅雨の雨が降っていたのだろうか。風香たちが家に到着すると道路はすっかり濡れていた。
 風香は少し寒さを感じ、体を包んでいたブランケットを強く握りしめた。すると、柊は「大丈夫?寒いよね……」と心配そうに声を掛けてくれる。
 彼はきっと怒っているのだろう。そう思っていただけに、優しい言葉をかけてくれ、風香は嬉しさを感じていた。




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