溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
12話「疑惑と侵入」
12話「疑惑と侵入」
風香の誕生日当日は2人とも仕事が入っていた。そのため誕生日は夜から会えることになった。調度よく次の日は風香は休みで、柊は夜から仕事だったので、ゆっくり出来そうだ、という事で風香のお泊まりが決定した。
彼の部屋で泊まったこと何度もある。もちろん、彼と深く抱きしめ合って寝たことだってある。
それなのに、本当に全てが初めてかのようにドキドキしてしまうのは不思議だった。
それに、風香の考えが少しずつ変わってきていた。
柊が記憶をなくしてもいい。
もう1度、恋人の時間を積み重ねていけばいいのだ。そして、いつか思い出してくれたときに、「忘れてもまた出会えるんだね」と笑えればいい。
そんな風に思ってしまった。
「本当にいいのかなー?」
「え……」
風香の幸せモードを心配した声により、風香はまた現実を突きつけられた。
デートに日に偶然会った美鈴が、風香の事を心配して会いに来てくれていた。
2人が好きなミントココアがあるカフェのお店に来ていた。ビルの2階にある小さなお店で、少し薄暗い照明落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「いいって何が?」
「だって、少しおかしくない?風香には少し辛い話になるかもしれないけど……メモリーロスを服用していたという事は、何か風香を忘れる必要があったって事だよね」
「………うん。私もそう思ってる。もしかして、柊は私の事が嫌いになったのかって」
「んー………それはないと思うけどな。柊さんは風香に溺愛していたし。でも、それも可能性の1つだよね。それと………」
美鈴は、風香を心配そうに見つめ、少し悩んだ様子を見せた後にゆっくりと口を開いた。